インプレッサエンジンO/H(1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)

インプレッサエンジンO/H(4)

さて、ベルト類一式が外れたら、次はシリンダーヘッドの取り外しです。

スバルは水平対向エンジンなので、当然ヘッドは左右にあります。よって、エンジン台をお持ちでない方は少々作業しにくいと思いますが、構わずすすめます。

まず、ヘッドカバーを外します。この時、パッキンは片方に、カバー外周1個とプラグホールにそれぞれ1個づつ、あとボルト部にシーリングワッシャ−が計8個ありますが、この部品は組み付けの時、新品に換えておきましょう。安い部品ですし、ヘッドカバーからのオイル漏れはスバルの持病ですから…(なんたってヘッドが横向いてますからねェ)

ヘッドの後ろ側、カムシャフトの延長上に半月状の黒い蓋がありますが、これは特別オイル漏れ等がなければそのまま行けます。

カバーが外れたら次はカムシャフト取り外しです。別に難しい事はありません。ネジ外すだけ…外れたら、カムシャフトやホルダー、リフター等どこに付いていたか後で分かるようにしておきます。


カムシャフトには「L‐IN」とか「R‐EX」等と刻印があります。



ホルダーにはヘッド番号と1Eとか刻印されてますので最悪、バラバラになっても分かります。

この写真なら、ヘッドNo809でホルダーは809ヘッドの4番シリンダーのインテークといった具合です。

リフターは何にも印がないので、私は100均のクリアケース(間仕切りのあるもの)を使ってます。


さて、ヘッドボルトを緩めます。


ボルトはこんな形をしております。

だいぶピンぼけで見にくいですが、サイズ14mmの12角です。むっちゃ固く締まっております。新車でもボルトが伸びているのか、最後まで固い時があります。

ボルトも組付け時は新品に換えておきたいところです。


んで、ボルト6本を全部外したらヘッドは取れます。この時、エンジンを正立(ヘッド横向き)で作業している場合は、ヘッドの落下を防ぐ為2本くらいボルトを残しておく方が良いでしょう。

反対側も同様に外したら、エンジンはこんなに小さくなります。力持ちなら一人でエンジン運べます。

ここで、オイルポンプやウォーターポンプを外します(写真ではすでに外れてます)。オイルポンプはボルトが2種類ありますので組付けの時、間違わないように気を付けます。


次はオイルパンを取ります。力持ちに頼んでエンジンをひっくり返しましょう。

ボルトを全部取っても液状ガスケットでガッチリくっついています。接着面に、薄くて強度のあるスクレーパー等を挿しこみソオッとこじります。なるべく幅広の物が良いです。


で、オイルパン、バッフル、ストレーナを外すとこうなります。

ここでピストンピンを抜きます。「えっ?ここで」と思われるかもしれませんが、間違いではありません。最終的にシリンダーブロックを分割する時、ピストンはシリンダーに残ります。ここが普通の直列エンジンとは違う所です。


エンジン前側のサービスホールプラグを14mmヘキサゴンレンチで取外し[エンジンO/H 2]の巻頭で述べた時と同様クランクシャフトをピストンピンが見える位置まで回転させてサークリップを取り、そのままピンも抜き取ります。

抜き方は色々あるのですが、私はサークリッププライヤー軸用(握ると開くタイプ)をピン穴に入れて引き抜きますが、サービスホールプラグのネジ部を傷めてしまう可能性があるのであまりお勧めしません。

前側シリンダーのピンが抜けたら、クランクシャフトを回転させて今度は後ろ側ピストンのピンを抜きます。
前側のコンロッドがピストンから外れて下側に落ちるので後ろ側のピストンやピンが前の穴から見えます。そのままナガーイ棒みたいな物で後ろへ押し出します。

これで、コンロッドとピストンの縁は切れました。


インプレッサエンジンO/H(5)



ピストンとコンロッドの縁が切れたらシリンダーブロックを分割します。

取り付けボルトの数は、M10:10本 M8:7本 M6:1本です。

まず、外側に見えるM8と、オイルパンの中にあるM6を全部外します。これはブロック結合の補助ボルトです。


また、M8は1本だけ長いものがあるので組付けの時は気をつけます。

続いてメインのM10ボルトです。

2、4番ブロックから4本、1、3番ブロックから6本向かい合わせに締まってます。しかも形状が12角のボルトですのでサイズ12mm、12角のソケットを使用します。それらをジャンジャン外していきます。


長さやワッシャーの違いがあるので、取りつけ場所をよく覚えておきます。


結合ボルトが外れたらブロックはパックリ割れる…と思ったら大間違いです。

ブロック合わせ面のノックピンがしっかり挿しこまれているのと、同じく合わせ面に液状ガスケットが塗られているので、念のため結合ボルトを2本くらい仮締めしてエンジン台から外し、ブロックに傷がつかないようにダンボールやウエスを敷き詰めた地べたに降ろします。

そこで再び仮締めしたボルトを抜き、ブロックの丈夫そうな所にゴムハンマーなどで軽く衝撃を与え、少しづつブロックを割ります。この時、少し隙間が開いたからといって決して間にドライバーなどを差し込んでこじてはいけません。
変なところをこじたら、後で取り返しのつかないことになりますので、徐々にゆっくり割っていきます。

ノックピンが完全に相手のブロックから抜けたら後は簡単にブロックは分離できます。

後はクランクをブロックから取外し親メタルを分類し、また外したクランクからコンロッドを外し、子メタルも分類します。

これでエンジン分解は全て終わりです。


インプレッサエンジンO/H(6)

部品がバラバラになったらサッサと洗浄します。ひたすら洗浄します。洗浄だけで丸々2日は費やします。

この車両は排気量アップするので、ボーリングのためにブロックは外注加工に出します。大体その期間が2〜3日なので、その間はひたすら洗浄します。

洗浄できた部品一式を棚に保管しています。きっちりカバーしておけば埃も被らないし、小さな部品もなくす事はありませんから!もちろん組付け前にはもう一度軽く洗浄します。

とにかく、エンジン組むには、取り合えず洗浄が第一です。これが完璧にできればエンジンO/Hの8割はできたといってもいいでしょう。(と私は思います)


そうこうしているうちにブロックが外注先から帰ってきました。

これも加工後はかなり汚れているので充分洗浄します。

この時、ブロック本体やピストンスカートなどの角部は入念にバリ取りしておきます。

また、写真に撮るのを忘れましたが当ガレージではこの時に電子天秤を使い、ピストン、コンロッドなどのバランス取りをしています。


ひと通り洗浄できたら次は測定です。
ピストンやコンロッドの重量合わせは先ほど終わっているので、ピストンとシリンダーボア径の測定をします。スバルのEJ20エンジンはオールアルミブロックなのでピストンクリアランス少々狭い目で大体15/1000〜20/1000mmぐらいでしょう。
外注加工に出す時に業者の人に伝えてあるので、正確にボーリングできているかどうかはその業者さんの腕次第です。

そんで、この後はメタルの測定です。
スバルの親メタルの場合、それぞれのブロックがメタルのホルダーになっているので一旦仮で左右のブロックを結合する必要があります。

測定の方法はプラスチゲージでもいいのですが、私はマイクロメーターとボアゲージを使用します。
メタルを付けて左右ブロックを取り付け、ボルトのネジ部及びワッシャーにグリスを薄く塗り、結合ボルトを規定トルクで締めつけます。

全て規定値内でした。同様に子メタルも測定しこちらもOK!
後はピストンリングの合口隙間やクランクシャフトとコンロッドのサイドクリアランス、クランクのスラストクリアランスなどを計測、調整していよいよ組み付けになります。


インプレッサエンジンO/H(7)

いよいよ組み付けに入ります。基本的には分解時の逆です。ただ、何度も書いている通り、スバルは水平対向エンジンなので通常のレシプロエンジンとは要領が違います。

まず、ブロックの片側(右側ブロックがよいかと・・・)をエンジン台に装着します。

 

続いて測定洗浄済みの親メタルをブロックに嵌めて、クランクとの接触面に薄くエンジンオイルを塗布します。ちなみに当ガレージでは現在GulfとMOTULを使用しております。

そしたら、その上にクランクシャフトを乗せます。

この時、あらかじめクランクシャフトにコンロッドを取り付けておきます。

そんで、2番、4番のコンロッドを上に持ち上げてクランクシャフトをブロックに乗せます。(1番、3番はそれぞれのシリンダーに向けておきます)

反対側のブロックにも親メタルをはめてオイルを塗り、ブロック結合ボルトのシーリングワッシャーを新品に交換。また、ネジ部や座面にもオイルを塗って、間に挟むOリングを手元に用意し準備を整えてからいよいよブロック合体です。

 

その前にブロックの合わせ面に薄く液状ガスケットを塗ります。厚く塗りすぎると、はみ出した液状ガスケットがエンジン内部に落ちたり、オイルの通路を塞いでしまいます。

液状ガスケットがまんべんなく塗れたらあらかじめ用意しておいたOリング(オレンジ1ヶ黒3ヶ)を所定の位置においてブロックを合体させます。

ガスケットが乾かないうちに手際良く各ボルトを締めつけます。(この写真は分解時の物なので汚れは気にしないで下さい)

ボルト締めつけ後、クランクを手で回して軽く回るか点検します。

この時点では、油だらけの手でクランクを回しても軽く回るはずです。もし回らなければ再度分解して原因を探します。

 

問題なければRrオイルシールを取り付けて次はピストン挿入です。

だがしかし、このエンジンキットにはピストン裏にオイルを噴射してピストントップを冷やすオイルジェットなる物が同梱されております。ちなみに、ボーリング時にオイルジェット取付用穴加工もされております。

これをピストンのクーリングチャンネル穴に向けて取り付けるのです。

なかなかシビレル作業です。なんてったって一つ一つ手作りで、微妙に形やサイズが違うのでポン付けすればOKと言うわけにはいかないのです。ある程度の経験とカンが必要です。

 

ピストンリングをピストンに折らない様に装着し、合口をそれぞれの方向に向けて、ピストンピンサークリップを片側だけに取り付けてシリンダーに挿入します。なぜ、片側だけかというと…後でわかります。

ある程度、挿入できたらピストンピン穴とコンロッド小端穴をサービスホールから覗き、位置を合わせたところで、ピストンピンを入れます。(これも分解時の写真なので汚れています)

これまた至難の技で、ディーラーさんには特工があるらしいのですが、これも経験とカンで取り付けちゃいます。この時に片側にサークリップを入れ忘れていると、ショックで3日くらい立ち直れません・・・無事ピンが入ったらもう片側のサークリップをサービスホールから取り付けます。この作業を4か所行うわけですが、6気筒でなくて良かったと思います。

ここまでできたら、後は分解時の逆の作業をしていけばOKです。まあ、組付け時にも小さなポイントは多々あるのですが、この辺で終了とさせていただきます。

ご自分でエンジンO/Hをしようと思っている人、「ここだけ分からないからやって」という方、KNSまでお気軽にご連絡下さい。



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